Elvis/Niagara

fabzweb2005-01-11



ELVIS「監獄ロック」がイギリスでNo.1ヒットだって!今週のチャートの話!


前回-書き忘れてたんですが、
最近の「Elvis-はてな化運動」(笑) は〜1/8の生誕70年を受けてのものでして、
そんな事してたら〜うれしいニュースが飛び込んで来ました。


「監獄ロック」英で1位に プレスリー生誕70年 - 共同通信 - エンターテインメント
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050110-00000131-kyodo-ent


いや〜素晴らしい。この曲であるというのが、またいい。
たくさんの人がカヴァーしてるでしょうが、このオリジナルには〜誰も勝てないですね。
ELVISのダイナミズムはもちろん、何より楽曲が、音像が、もう完璧です。
構成も詞も見事ですし、よく聴くと〜50年代で既に“裏打ちリズム”の箇所あるのです!
何人か当時の日本の人のカヴァー聴いたんですけど、みんなソコ見落としてましたよ〜。


やはり、この曲を含み〜ELVISに多くの名曲を提供したソングライター/プロデューサーの
Leiber and Stollerは、是非とも「はてなキーワード化」しないとダメでしょうね。


 * * *


そして今回の「Jailhouse Rock」英チャートで1位を〜
僕以上に喜んでいるに違いない“Elvis Presleyマニア”として真っ先に浮かんだのが、
大滝詠一さん。
ファースト・ソロ・アルバム『大滝詠一』に収録の「いかすぜ!この恋」は、
ロンバケ』しか知らない人が聴いたらきっと驚く“Elvisマニア”ぶり全開の名曲です。


案の定、めったに音楽に触れない大滝氏のサイトが祝・更新されていました
(あのサイトは非公開サイトなのでしょうか?どなたかご存知でしたらお教えください)




ここでいい機会なので、僕にとっての“大滝さん像”を書かせてもらいたいと思います。


実はこのサイトを始めた早い時期に、大滝さん物の軽い“前振り文”を書いたのですが、
とある方に-書き方についてお叱りを受けてしまい〜続きがナカナカ書けずにいました。
しかし〜以降に書いた文にも、僕なりの“大滝さん像”をひそかに現したつもりですが。
今回ここで、あえて思い切って書いてみます。
これはあくまで“私見”ですので、ご承知の上でご覧下さい。


 *

僕の中で、
「大滝サウンド=スペクター・サウンド云々」という捉え方には…非常に抵抗があるのです。
また、「大滝詠一=A LONG VACATION」という一般音楽ファン的な見方ばかりなのには〜
少々疑問を持ってしまっているのです。


勿論、「大滝詠一=A LONG VACATION」という方が居て、当然いいんですけど、
僕まで「大滝詠一=A LONG VACATION」でなくとも、別に構わないんじゃないでしょうか?


大滝さんと言えば「音の厚いスペクター・サウンド的」という印象は確かに強いですし、
ご自身も「フィル・スペクター」について言及される事は過去に多かったと思います。
しかし、大滝さんは、何もスペクターに限った人じゃない。
同様にElvisにもLeiber-Stollerにも、その他様々に精通されている方だと思います。
そんな大滝さんを、スペクターやロンバケで限定してしまうのは…勿体ないと思うのです。
それが、ある意味…大滝さんに、
ロンバケ的でやらないと」というプレッシャーを〜与えてしまったのではないか、とも。


『A LONG VACATION』は確かに素晴らしいアルバムですし、色んな機会を生んだと思います。
あの作品をきっかけとして〜ポップスやオールディーズに興味持たれた方も多いでしょう。
そして一方で、それ以前の大滝さんの作品にも〜再発等でスポットが何度も当たった筈です。


皆様は、初期のアルバム『大滝詠一』や『NIAGARA MOON』は…お聴きになられたでしょうか?
はっぴいえんど時代の大滝さんも遡って聴かれた方も多いのではないでしょうか?
それらは『A LONG VACATION』のサウンドとは異なる内容ですけれども、
それら初期の大滝サウンドの方が『A LONG VACATION』よりハマル人がいても不思議は無いです。


“スペクター調”と言う意味では〜『NIAGARA MOON』の「Cyder'74」は、数十秒のCM作品ながら
既に“スペクター調”の別次元に立った素晴らしくイノヴェイティヴな作品だと思います。
あれは〜個人的には、スペクター・サウンドを既に超越していると思ってます。
あの路線で〜もしアルバム1枚聞けたら〜日本の『PET SOUNDS』だって生まれたかも…。
当時大滝氏が手掛けたCM作品集『NIAGARA CM SPECIAL』もイノヴェイティヴさが炸裂しています。
また、『NIAGARA CALENDAR』の「五月雨」「青空のように」「真夏の昼の夢」を聴いた上では、
『A LONG VACATION』は確かに素晴らしいですが、『ロンバケ至上主義』には僕はなれません。
メロディーと“スペクター調”のマッチングと言う意味では〜ロンバケ以上かも知れません。


ただ一方で、『LET's ONDO AGAIN』のような作品を、過剰に持ち上げる気は僕には起きません。
NIAGARA MOON』の“はじめに曲ありき”のものと違い、“ノヴェルティの為のノヴェルティ”
は〜同じノヴェルティ・ソングでも僕には何かしら違いを感じてしまうのです(以降のものも)。
僕は大滝さんやフィル・スペクターのファンですが、神格化はしていません。
僕の個人的なヒーローのザ・フーブライアン・ウィルソンラスカルズに関しても同じです。
どっぷりもいいですけど客観性も無ければ、他の優れた物に〜時に耳を貸せなくなると思います。


スペクターもいいけど、レスリー・ゴーアペトゥラ・クラークシャングリラスもシフォンズ
も、ドリフターズもフォー・シーズンスもニール・セダカキャロル・キングも同等に最高です。


そういう視点で『A LONG VACATION』を客観すると、本当は“スペクター・サウンド”と言うより、
“スペクター・サウンド調”という装飾またはKeywordを掲げた“メロディー・アルバム”でしょう。
厳密に“スペクター・サウンド調”であるのは「恋するカレン」くらいで、
君は天然色」は〜オープニングの多少“ハッタリ感”を出す為のアレンジである気もします。
優れていながらも大衆向けではなかった初期作のアレンジを、豪華で安心にコーティングして〜
80年代当時のメロウ系ニュー・ミュージック好きをも視野に置いた事が〜大成功の要因かも。
(僕個人は、最もシンプルな「スピーチ・バルーン」こそ最高の隠れた名曲だと思っていますが)


“スペクター・サウンド調”という意味では、むしろ本当は…『A LONG VACATION』前後の〜
須藤薫のシングル「あなただけI Love You」や松田聖子のアルバム『風立ちぬ』片面のプロデュ
ースの方が〜僕には“楽曲”がきらめいているように思え、スペクター調も活きてる気がします。
ロンバケ』より「あなただけI Love You」+『風立ちぬ』が好きな人がいても、いい筈です。


そして『EACH TIME』。僕が聴きたかったのはギミックでも厚い音でも無く、“楽曲”でした。
『EACH TIME』も、それ以降も、皆が大滝さんに望む“スペクター・サウンド調”というものが、
時に“装飾”ではなく“重い鎧”として〜楽曲自体に負荷を掛けてしまっている気すらします。


では『ロンバケ』以降の大滝さんに〜僕は興味が無かったというのでしょうか?
それは、違います。
ロンバケ』以降に…僕にとっての“大滝さんベスト作品”があります。


それは『EACH TIME』に収録された、「1969年のドラッグ・レース」というナンバー。
何故あの名曲が埋もれてしまうのか、僕には判りません。
“ホット・ロッドでセカンド・ラインのバディ・ホリーmeetsスペクター”という〜
非常にイノヴェイティヴな作品だったと思うのです。ジョージ・ハリスンの「Wah-Wah」級です。
あの曲こそ『EACH TIME』で最も絶賛に値するのに〜後に語られる機会は非常に少ない模様です。
あれは大滝さんご自身もきっと「やったな」と思った筈。「ロンバケから進んだな」と。
『EACH TIME』の中で、あの曲は“作りたくて作った”という表情をして輝いています。


『A LONG VACATION』の後で、きっと大変な重圧であったであろう『EACH TIME』。
その中で「1969年のドラッグ・レース」を作られた大滝さんを〜僕はRESPECTしています。
僕にとって大滝さんは、
『A LONG VACATION』の人であると同等に…もしくはそれ以上に、
はっぴいえんどや、『大滝詠一』『NIAGARA MOON』「1969年のドラッグ・レース」を作った〜
“温故知新かつイノヴェイティヴな人”として存在しているのです。


スペクター作品で「Be My Baby」でなく「He's A Rebel」「I Wish I Never Saw The Sunshine」
が『最高!』という人が居てもいいですし、
リバー&ストラーの方が好き』という人がいても全然おかしな事では無いのです。
そういう意味でも、僕は思うのです。
大滝さんに伝えたいのです。大滝さんに関し、同様に思っている人も〜少なくないはず。
“『A LONG VACATION』は最高ですけど、『A LONG VACATION』が大滝さんのすべてじゃない”と。


去年はブライアン・ウィルソンの『SMiLE』を聴いて、僕は大滝さんを連想しました。
大滝さんは、あのアルバムを〜どう聴かれたのでしょうか…。




音楽を色々と聴けば聴く程、
一概には、「一方からだけの物差しでは言えなくなる場合」もあります。
そしてある意味、「一方からだけの物差しでは言えなくなる場合」という“事態”は、
それを“困る事態”と捉えるばかりの出来事とは限らず〜、
時に、見方を変えれば、他の見地を知れる可能性を秘めた“機会”であったりもします。


そして、これはきっと、音楽じゃない話にも当てはまる事でしょう。


“何々至上主義”となるより…、
  好きなものを〜いっぱい集めたほうが、きっと楽しいですよね?