●『Niagara Moon』はニューオリンズR&Bの“ひとつの入口”

fabzweb2005-04-18



(前回の続き)([大滝関連まとめて見るには〜上部の[大滝 詠一]をクリック☆)


(今日の文は前回の大滝文と違い〜相当ツッこんだ内容です。
 ですが〜大滝&Popsビギナ-/Rock派の人こそ読んでみてね!)


大滝詠一さんと言えば洋楽フリークぶりが有名ですが、
大滝サウンドをひとつのきっかけとして〜
洋楽ポップスの世界に入った人も多いと思います(僕は違いますが→詳細こちら)。
ですが〜先日の「レコード・コレクターズ」誌の大滝特集を見て…思ったことが、いくつか。


専門誌らしく〜いくつか『Niagara Moon』に影響を与えたニューオリンズR&B等が掲載
されているのですが…切り口があいも変わらず“元ネタ”“大滝崇拝”に終止でしたよ。
この辺りの大滝さんの音楽は大好きなのですが、“大滝崇拝オタク”は、オレは苦手なんですよ。
何かのマニアになっちゃうと時々、“誰々至上主義”みたいになっちゃう人いるけど〜、
気を付けないと…あれは大抵、カッコ悪い。逆に本質のところが見えなくなってる人も多い気も。


Niagara Moon』なんていう〜あれだけ最適の“入口”がありながら、“レアな元ネタ情報Get”
とかの重箱の隅つついてばかりで、メイン・ディッシュのニューオリンズR&Bの“懐”がそこに
提示されているのに〜目に入らないなんて勿体無い!まるで“木を見て森を見ず”という感じです。
Niagara Moon』収録曲の〜例えば「HAND CLAPPING RHUMBA」、ウルフルズ伊藤銀次制作で
カヴァーした「FUSSA STRUT」「楽しい夜更し」「ROCK'N' ROLL MARCH」などは〜、明らかに
ニューオリンズR&Bの影響下にあるものなのです。


“洋楽入口=はっぴいえんど派”によくある『踏み絵的アルバム』と言える物がいくつか存在します。
例えば〜これら。
・『Gumbo』/Dr・ジョン(asin:B000002I6P)
・『Discover America』/ヴァン・ダイク・パークス(asin:B000005JB2)
・『Dixie Chicken』/リトル・フィート(asin:B000002KEP)



  


Dr・ジョンはエリック・クラプトンら英国Rock勢の話題でも登場するニューオリンズKey Parson。
ヴァン・ダイク・パークスは〜ビーチ・ボーイズ/ブライアン・ウィルソンの例のカルト作品
『SMiLE』やハーパース・ビザールらの“バーバンク・サウンド”にも関与したカルトな人物。
そしてLittle Featは〜その“バーバンク・サウンド”代表格で鈴木茂『Band Wagon』にて共演…。


これらは確かに素晴らしい作品です。しかし同時に、ここで止まってしまう人の何と多い事か!!
確かにこれらの人/作品が無ければ〜『Niagara Moon』、『Band Wagon』、そして『泰安洋行
細野晴臣)は存在していないかも知れません。
ですが、『Gumbo』『Discover America』『Dexie Chicken』といった作品から浮かび上がるのは-
ニューオリンズR&Bの懐〜ミーターズアラン・トゥーサンの存在に他ならないのです!


これらの作品が発表された当時…70年代前半において、『Gumbo』や『Discover America』は
新感覚ではあったでしょうが〜レトロスペクティヴ切口。“リズムの歴史の一遍を紐解いた企画盤”
という趣が強いのも事実。そして『Dexie Chicken』は〜あくまで“ニューオリンズ要素を含むRock”。
これらは優れたSampleではありますが、言ってみれば『Niagara Moon』と同じ〜“入口”なのです。
60年代末〜70年代に一世風靡したR&B/Funkの大きな波の中心であるニューオリンズR&B/Funk
の、当時の“リアルタイム”の“Main Artist/Producer”と言える存在は〜やはりミーターズ
アラン・トゥーサンに他ならないと思いますので、是非そこを掘下げ聴いてみてはいかが?
そうすれば例えば〜細野氏「Aiwoiwaiaou」や再生YMO「OK」も〜R&Bだったんだ〜と判るはず。
『Discover America』『Dexie Chicken』はアラン・トゥーサン作品Coverが核ですし、Dr.John
『Gumbo』に続く名盤『The Right Place』をアラン・トゥーサン+ミーターズで作っているのです!!


そこで、上記の『踏み絵的アルバム』から更に一歩踏み込んで、是非これらを聴いてみてください。
・『In The Right Place』/Dr.Johnアラン・トゥーサンProduce/ミーターズ参加)
 (asin:B000002I6Q)
・『The Meters』(Bestでもいいです)/ミーターズアラン・トゥーサンProduce)
 (asin:B0000365IM)
・『Rejuvenation』/ミーターズアラン・トゥーサンProduce)(asin:B00004T3XI)
・『Life,Love and Faith』/アラン・トゥーサンミーターズ参加)(asin:B000003686)
・『Yes We Can』/リー・ドーシー(アラン・トゥーサンProduce/ミーターズ参加)
 (asin:B0007KIFL4)

Amazon:asin商品掲載ありませんがGreatな2点。
・『Wasted』(他の何でもいいです)/ゲーターズ(ミーターズの同志/ライヴァル)
・『Anticipation』/ウイリー・ティー(ゲーターズ/ワイルド・マグノリアス中心人物)

     ■ □
 そして、ニューオリンズFreakの70年代ブリティッシュ・ロック物も。
・『Jess Roden』/ジェス・ローデン(アラン・トゥーサンProduce/ミーターズ参加)
 (asin:B00000JA0F)

更に、現代Jazz Vocal大スターが突然放ったニューオリンズFreak炸裂盤も。
・『She』/ハリー・コニック・Jr.(元ミーターズ・メンバー参加)(asin:B000002A64)
   


これだけ聴けば〜既に相当ハマっていると言える事になるでしょう〜。もはやマニアと言えます。
ニューオリンズR&Bの弾むリズムのユニークさに身を委ねるだけでも、相当に楽しいハズです。


先日の記事の[注目新人Litte Barrie]に続いて〜“ミーターズ”つながりの内容となりましたが、
Niagara Moon』再発という“機会”と併わせ…何故こんな事を書いてみたかという裏テーマは、
ニューオリンズR&Bというものは、実は〜
“R&B苦手のロック派にとって〜最も入り易いR&Bの入口”に成り得るのではないかと、
僕は常々思っているからなのです。

ニューオリンズR&Bは、スティーヴィー・ワンダーやアイズレー・ブラザースと並び〜リズムや
メロディーがRock/Pops派に親しみ易いという側面があると同時に、ジェームス・ブラウンらの
ファンクへの扉とも成り得る筈のものです。いきなりJBでは理解出来ないかも知れないものが〜、
例えば、ミーターズやスライ経由なら〜自然と体からスッと入っていけるかも知れませんよ。




また今回の記事を書きながら同時に思った事なのですが、今回の件で例えるなら…、
“大滝崇拝”という人か、“大滝さんは好きな音楽の一部”というスタンスの人になるかの違いは〜
その人の“R&B/Pops順応度”によっても相当異なるだろうとも思えるのです。
大滝さんや山下達郎さんがきっかけとなって音楽の輪を拡げていけている方々は素晴らしいと思え
るのですが、“過剰な大滝マニア”、“過剰な達郎マニア”みたいにはなって欲しくないのです。
それはまるで“巨人ファン”みたいなもので、“巨人なら何でもok”という温床となりかねません。
確かに“巨人ファン”でいれば同志は多いし常に話題に上がり易い“長いモノに巻かれろ”状態。
しかし野球は相手チームが無いと出来ないし、“敵ながらあっぱれ”な存在が無いと面白くない。
阪神や中日にも凄い選手は居るし、それらの良さも客観出来てはじめて本当に面白くなるのでは?


そういう訳で〜いま僕はここでザ・コレクターズをPushしているもので、今後同様に特集するかも
知れないキリンジ松尾清憲aikoピチカート・ファイヴなども…言ってみれば“優れた敵球団”
なのですよ。そしてもちろん、『メジャー・リーグも存在している』という事実も〜お忘れなく!


“頭でっかち”や“借物の評価”“情報操作”、そして“長いモノに巻かれろ”という温床などが、
いろんな好きなモノをいっぱい集める〜妨げにならないように♪
私達が聴いているCDの中心は、“付加価値”では無く〜“音楽自体”という嗜好品なのですからね。
そして…どんなものを嗜好するかという事の蓄積こそ、
その人を映す鏡と成り得るものではないかと、僕は思うのです。




(・近日予定/“R&B黄金時代〜影のKey Parson”
  …アラン・トゥーサン/ユージン・レコード/チャールズ・ステップニー/レス・マッキャン
(・ミーターズThe Meters〜プチ解説http://d.hatena.ne.jp/fabzweb/20050107
(・リトル・バーリーLittle Barrie記事http://d.hatena.ne.jp/fabzweb/20050401
(・ザ・コレクターズThe Collectors記事http://d.hatena.ne.jp/fabzweb/searchdiary?word=%2a%5b%a5%b3%a5%ec%a5%af%a5%bf%2d%a5%ba%5d