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●オマー Omar
『大きくなったら、オマーのようになりたい。』 (スティーヴィー・ワンダー談・実話)
90年代UKソウル/アシッド・ジャズ随一の異端才人。“現代R&B界のStevie Wonder”。
前出R・ケリーを現代米国R&B代表に挙げるとすれば、英国代表の"格"はオマーでしょう。
しかし、R.Kellyが常にメジャー感覚溢れるものなのに対し、
オマーの音楽は徐々にマニアックさや雑食ぶりを推し進めているので、
その辺のいかにもUKソウルぶりがまた〜米国勢と対比してみると面白いかも知れません。
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1990年にインディ・レーベルから超名曲「There's Nothin' Like This」でデビュー。
アーバンなサウンドに温かい歌声と美しいメロディ、そして隠し味のレゲエ感覚…。
現在も評価の高いこの完璧なメロウ・バラードと同名アルバムは話題を呼び、
90年代当時イギリスで台頭してきたクラブ系レーベル "トーキン・ラウドTalkin' Loud"
より再発売されるやいなや、UKソウル・チャートNo.1という大ヒットとなり注目されました。
このデビュー・アルバムは殆どがM3Rという安価系シンセ音源のオマー自身の演奏/打込の宅録
で、センスとソングライティング次第で音楽は7割方決まるという見本の様な作品と言えます。
オマーの音楽基盤は当然R&B等ブラック・ミュージックではあるでしょうが、それに限らず-
ジャズ/ロック/テクノ/映画音楽など…様々な要素が見え隠れするのも魅力となっています。
彼のフェイヴァリットとしてビートルズやY.M.O.、クラッシュなんて名も挙げられていますが、
それも頷ける要素が彼のサウンドの中でしっかり身となっている点がユニークです。
そうした様々な音楽要素を貪欲に取り入れたアーチストの先陣として挙げられる〜スティ
ーヴィー・ワンダーからの影響は特に顕著で、具体的なパクリ等は皆無なのにも関わらず、
センスとしてのシンセサイザーやベース等のフレージング感覚など…時に本人を超えてます。
そして、そのスティーヴィー当人が冒頭のコメントを述べたきっかけとなったのが〜
'91年の入魂セカンド・アルバム『MUSIC』。
ファーストの部分的チープさを一掃、曲によりバンドを導入したり、変態シンセ・フレーズ
も冴えに冴え(?!)〜ポップさと過剰さの共存という名盤となり評価を決定付けました。
ジャジーなものからHip Hop系、レゲエ、ファンク・テクノetc…そのどれもが「オマー印」。
当時来日した際、Pizzicato Five〜オリジナル・ラヴの田島貴男のやってたTV音楽番組で〜
『オマーでおま〜。』 と無理矢理言わされてたのが脳裏を離れません(笑)。
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以降のオマーは、『MUSIC』が他のミュージシャン達にも高く評価されたせいもあってか、
実に様々なミュージシャンと共演を果たしています。
3rdアルバム『FOR PLEASURE』('94),4thアルバム『THIS IS NOT A LOVE SONG』('97)
では元ザ・システムThe SystemのDavid Frankを共同プロデューサーに迎えたり、
Motownレーベルで知られるラモント・ドジャーLamont Dozier/レオン・ウェアLeon Ware
らとの共作、元スティーヴィー夫人シリータSyreetaやハーヴィー・メイソンHarvey Mason
との共演など、非常に豪華かつ意義深いものとなりました。
その極め付けが、スティーヴィー・ワンダーとの共演。
たいへんな光栄だったと思います。心の師に違いなかったでしょうから。
しかし、問題が…。
「スティーヴィー自身の次の作品に収録される予定だよ。」
…とオマーのコメントがあったのですが、
しかし、それから…早何年?
肝心の「スティーヴィー自身の新作」というの自体が発表されてないのです〜
オクラ入りにならない事を…真に真に祈ります〜
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その後のオマーは、マクスウェルMaxwellやディアンジェロD'Angelo等のニュー・クラシック
・ソウル系の後輩陣にリスペクトされる側に回った感が強く、2000年作の『BEST BY FAR』
ではエリカ・バドゥErykah Badu(US盤)やアンジー・ストーンAngie Stone(Europa盤)らを
ゲストに迎えたり、コモンCommonやディミトリ・フロム・パリDimitri from Parisの
近作での客演、ジャネット・ケイJanet Kayのプロデュース等、多種な活動に及んでいます。
最新作『BEST BY FAR』は『MUSIC』に次ぐ傑作で、ミシェル・ルグランやラロ・シフリンら
のサンプリングとの自然な融合を始めとした〜“ラウンジ・ニュー・ソウル”(?)とも言うべき
充実さで、その独創性の健在ぶりをアピールしてくれました。
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R・ケリー等についても言える事なのですが、
「打込R&Bは死んでも聴かない」とかの損な理由を持つ方以外の音楽通に〜
オマーは本当にお勧め出来る才人です。
同時に…「オシャレ☆」という感覚でも聴ける存在でもある、という面もスゴイのですが。
オマーのサウンド創りの姿勢に関し、例えばすごい極端な言い方をすれば…
「スティーヴィー・ワンダーもチャールズ・ステップニーもボブ・マーリィーも、
ブライアン・ウィルソンもバカラックもスペクターも、…作品創りの姿勢はテクノだっ!」
〜と言えば、乱暴ですが多少ニュアンスは伝わるでしょうか?
オマーの音楽性の高さは、'60〜70年代ソウルのビッグ・ネームに匹敵すると思います。
僕が聴くR&B系の80%位はそのR&B黄金期の作品なのですが〜
現代のアーティストで…僕がここまで誉めるという事は、本当に「異例」だと自覚してます。
『MUSIC』を聴いた段階で確信しました。
今後彼が〜売れようが売れまいが、僕はオマーのファンであり続けるであろうと。
*関連Artists* スティーヴィー・ワンダー ジャネット・ケイ エリカ・バドゥ コモン etc.
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