ジョン・クーガー・メレンキャンプ

fabzweb2004-11-03



「“No.2”は、頑張る人。」


先日たまたまビルボード最新全米チャートを見てたら、グリーン・デイ新譜のちょい下に〜
『WORDS & MUSIC: John Mellencamp's Greatest Hits』(3枚組)
というのがあって驚きました。
ジョン・メレンキャンプって、John CougarからJohn Cougar Mellencampに改名して、
本名John Mellencampに落ち着いた〜要するに元ジョン・クーガーです(笑)。


初登場13位…。ブライアン・ウィルソンのあの『SMiLE』と同じ…だ。
13位って、大スターのカムバック成功地点なのかなぁ〜なんてポツリと思ったのですが、
そんなコトより、今のアメリカでもやはり〜昔のアメリカン・ヒーロー
過去の偉業や幻の作品にちゃんとスポットを当てるというか情報アンテナが
きちんと立っているという事が、少しうれしかったりもしました。正直。


昔、ビルボード・アルバム・チャート本を見てても思ったのですけど、
例えば1970年頃、The Beach Boys はチャート100位以下に低迷してたのですが、
それでも幻の名曲をタイトル曲として収録した'71年作『SURF'S UP』は29位という
そこそこのヒットをちゃんと記録してたのを思い出しました。
しかし〜それから考えても、今、現代で『SMiLE』の13位は凄いんじゃないでしょうか?
今はお店に行かなくてもNetで情報が廻るせいもあったんでしょうね。
Netの弊害も確かにありますが、同時に利点も大きくあると感じさせられました。


 *
さて、ジョン・クーガー・メレンキャンプ。(あえて、この名でいきます)
実は最近彼に関して考える機会がたまたまあったので、今回のビルボード
個人的にとても印象深かったのです。
(彼の近作がいつもチャートでどの位まで上がってたのかは未認知なんですけどね…。)
彼は80年代のアメリカのロック・シーンの大スターだったわけなのですが、
常に、ある1人の男と引き合いに出される運命にありました。
その人物とは、「BOSS」こと、ブルース・スプリングスティーン
客観して聴くとそんなに似てるわけじゃないと僕は思うのですが、
ジョンを語る時〜必ず、「BOSSに次ぐ」とか、
ブルース・スプリングスティーンを筆頭に、ジョン・クーガー、誰々〜、…」
といった扱いを受けてしまっていたようで、
本人には大変気の毒だったのではないかと常々思っていました(想像ですが)。


そんな彼について…何故この2004年に考えていたかと言いますと、
実はこのサイトを開始して1ヶ月たったので、ちょっと個人的「アルバム100選」
みたいなのを作ってみようかなぁ〜と思い立ったのがきっかけでした。
ところがこの「100選」、挙げだしたら「500選」ぐらいになってしまい迷走中
なのですが、その中でこのジョン・クーガー・メレンキャンプの作品を100選に
入れてもいい位なんじゃないかなぁ、と思うようになっていたのです。


正直、僕はずっとメレンキャンプ派でした。ええ、少数派ですとも(笑)。
もっとも、スプリングスティーンが-もし『THE RIVER』路線を中心に展開してい
てくれてたら微妙ですが、実際は『BORN IN THE U.S.A.』へとなった訳ですし、
だからこそスプリングスティーンが国民的スター化したのも認知しています。
それでも、絶対メレンキャンプ派。
彼のサウンドスプリングスティーンとの決定的な違いは、そのファンキーさ。
ロックロックって言っても、そのロック・アーティストの中のR&Bに受けた影響度
や住んでいた場所、いつのどんなR&Bが好みかというのは作品に現れたりするもの。
「ロック一筋でブラック系は無視」という人にはこの感覚は伝わり難いかも知れ
ませんが、「R&Bが無きゃロックは生まれなかった」という事実は変え難いのです。


スプリングスティーンのR&Bからの影響は〜60年代中期アメリカ北部のMotown
筆頭とする「ノーザン・ソウル」と呼ばれるもの、及びそれらに強く影響を受け
た白人ミュージシャンによるR&B志向サウンド (「ブルー・アイド・ソウル」と呼
ばれる) あたりの匂いが漂っています。R&B影響度はそれほどは高くない方かも。
一方メレンキャンプは完全に南部R&B、特に70年代前期のサザン・ソウル色が濃厚
です。そして南部R&B系に憧れたブリティッシュ・バンドのR&B志向の匂いも。
簡単に言うと、スプリングスティーンが都会部のアスファルトの上だとすると、
メレンキャンプは土埃のダウン・トゥ・アース。カントリーロック的側面もあるし。
または、スプリングスティーンは求道的、メレンキャンプは〜やんちゃ男の開眼。
とにかくこの2人は、本来音楽的には全然違うものなのです。
2人の接点は、同時期に人気あったロックのソロで-アメリカについて唄うという位。


「2番手」とされるというのはこういう弊害もあるんだなぁ、と強く感じます。
ただ、一方で、だからこそ〜「バカヤロウっ!」と思い音楽自体に頑張れるのかも。
それは例えば、ビートルズに対するビーチ・ボーイズ
ローリング・ストーンズに対するザ・フーなんかについても思う事でもあります。


 *
メレンキャンプの代表作は〜ジョン・クーガー時代の出世作「Harts So Good」(2位)、
「Jack&Diane」(1位)、そしてそれらを含むアルバム『AMERICAN FOOL』(1位)という
'82年の3連続ヒットが順当でしょう。どれも傑作に違いありません。
しかし僕が100選に挙げようとしているのは、続く'83年にジョン・クーガー
メレンキャンプ名義に変えられて発表されたアルバム『UH-HUH』。

「Crumblin' Down」「Pink Houses」というシングルと、アルバム自体がTop10
ヒットという結果なのですが、チャート面より、その『UH-HUH』における見事な
ダウン・トゥ・アースさと腰の入ったファンキー・ロックぶりは特筆ものです。


「このアルバムはストーンズに捧げる」と書かれている通り、70年代初頭のスト
ーンズが目指したアメリカ南部サウンド志向を80年代に改めて挑戦した作品。
この路線〜正直ストーンズより自然にモノにしているような気すらします。
『UH-HUH』にはブラザース・ジョンソンのLouis JohnsonやWillie Weeksも参加
しており、意外な人選と思いきや、ここにしかないサウンドを作り上げてます。
また、70年代のストーンズのファンキー・ロック目指す感じ〜と言えば、素直に
浮かぶのはエアロスミス。エアロのファンにもメレンキャンプはオススメです。
70年代と90年代に活躍したエアロですが、80年代のエアロを仮定してメレンキャ
ンプを聴くと面白いかも知れません。当然別物ですが〜ニュアンスは近いはず。


特に「Pink Houses」は、さりげないシンプルかつ骨のある演奏と歌詞のテーマも
見事。当然"Pink House"とはザ・バンドの1stも念頭にあったでしょうし、アメ
リカを"自由のPink House"と例えているものです…ただし、皮肉たっぷりに。
アメリカって、自由の国だったはずじゃ?」というニュアンスが近いです。
この曲は、『メレンキャンプってどんな人?』と言われた時に聴かせる曲として
1番なんじゃないかなぁ〜と思います。彼自身やファン達も特に異義は無いはず。


 *
ジョン・メレンキャンプの最新情報として、彼は「VOTE FOR CHANGE」という〜
ブッシュ再選阻止を呼び掛けるツアーに参加したようです。
で、この発起人がスプリングスティーン…仲いいのか?(笑)
出演は他に〜Bonnie Raitt,Jackson Browne, James Taylor, John Fogerty,
Jurassic 5, Pearl Jam, R.E.M.などなど〜。凄いメンツですね。
ケリー候補うんぬんというより、とにかく「ブッシュ以外」にという雰囲気かも。


このツアーでメレンキャンプは「Pink Houses」やったのでしょうか?
ブッシュにはキツイ一発となるでしょうね。
僕も〜出来ることなら…「ブッシュ以外」に一票!
「ブッシュ以外」なら-ああはならないと期待したいから。
クリントンなら-ああはならなかったと思うから。
そろそろ投票結果が出始める頃。アメリカ人の-人としての危機意識が出始める頃。


「Little Pink Houses for You & Me」って…、本気で考えてみそ。



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追伸:
投票の結果、ブッシュ再選だそうで…ホントにいいのかアメリカ?!


今改めて考えてみても〜フランスのシラク大統領のあの時期の態度は素晴らしかった。
それに対するアメリカの対応は〜「フレンチ・フライ」を「フリーダム・フライ」と改名すること。
…そんなフリーダムは要らない。自由の女神像はフランスに還すべきでは?
「自由」の意味をすり替えてまで、どうしても自らがNo.1でいるために、
アメリカの表層化は突き進むようです。
本当に、その文化から思い描いた「僕の愛したアメリカ」は、
何十年も前に終わっているんだろうなぁ〜と痛切に感じました。


さよならアメリカ、さよならニッポン。
頑張れ、世界中の“No.2”。